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シルキィの話

ピクシブファンタジアに参加していました。
参加しようと思い立ったのが遅かったので、絵は3枚しか描けなかったのですが…。

pixivにUPした漫画では大分端折ってしまったのですが、本当はもう少し細かい話がありました。
短編小説(という名の覚え書き)を書いたので、ここに置いておきます。オマケ程度に…


■■ Silky  ■■



少女は真っ白な花の下で目を覚ました。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
心無しか体も軽い。
立ち上がって辺りを見回すと、そこら中が死体で埋め尽くされていた。

『ここはどこだろう』



少女は孤児だった。
雷のような音が響くあの夜を境に、母親が帰って来なくなったのだ。
少女は母親を待ち続けたが、その内食べる物もなくなってしまった。
少女は途方に暮れて家を出たのだった。

少女は小さな子供であったから、お腹がすいたと泣けば優しい大人が食べ物を恵んでくれた。
それは泥に塗れたパンであったり、庭の花を噛じる害虫であったりした。
優しい大人は誰もがこう言った。
「早くママが見つかると良いね」
少女はその度に頷き、母親を探して隣の街へと旅立つのであった。


母親を探し続けてどのぐらい経ったであろうか。
少女が自分の家の場所も、自分の名前さえも思い出せなくなった頃であった。
国は何度目かの戦火に包まれた。

少女は戦が嫌いだった。
まだ少女が母親と一緒に居た頃、時折家に訪れる男が居た。
男は母親に酷い暴力を振るった。
戦をする男たちは、誰も彼もその男に似ていたからだ。

少女には戦の臭いが分かる。
他の人間には分からないらしいのだが、少女にはそれが嗅ぎ分けられた。
その臭いがすると、少女は隣の街に走った。
今まではずっとそうやって戦から逃げてきた。


ところが今日は、運が悪かったのだ。
逃げても逃げても戦の臭いは追ってきていた。
どうやら戦火は四方から迫っていたらしい。
どこに行っても臭いは濃くなるばかりで、疲れ果てた少女は近くの屋敷に忍び込んで息を潜めていたのだった。

少女は頭をひねった。
そこから先を覚えて居ないのだ。
少女が隠れた場所は、屋敷の庭の鉢植えの影だった。
鉢植えからは大きな葉の草が生えていたから、小さな体を隠すのにはもってこいだったのだ。

しかしどうだろう、辺りには屋敷など見当たらない。
そこにあるのは瓦礫の山と、焼け焦げた人々の死体であった。
大きな葉から垂れ下がるように咲いているこの白い花にも覚えが無い。

「綺麗に咲いたわね」

突然聞こえた声に振り返ると、背の高い女が立っていた。

「あの子と見たかったわ。残念ね」

女は少女には見向きもせずに、白い花を大切そうに撫でている。
薄闇の中ではその顔もよく見えない。

「お屋敷も燃えてしまった。これだけ守れても仕方が無いのに」

女は左手にナイフのようなものを持っていた。
それを右手に持ち替えると、白い花に向かって振り下ろした。

『やめて』

少女が思わず声を上げると、女はぴくりと動きを止めた。
女は声の主を探すように辺りを見回しているが、少女には気付いていないようだ。

『お花、かわいそうだよ』

女はまた動きを止めて、それから静かに手をおろした。
少女は数歩女に歩み寄ったが、女は相変わらず虚空を見つめている。

「シルキィ?シルキィなの?どこにいるの?」

『あなたも子供を探しているの?わたしもママを探しているのよ』

女は耳をすませているようだったが、少女の声は届いていないようだった。
女は突然膝が抜けたように崩れ落ちた。
瓦礫だらけの地面に拳を叩き付けながら、声を上げて泣いている。
少女はしゃがんで女の顔を覗き込んだ。
煤けた灰が顔に付いているせいで、涙は真っ黒であった。

『わたし、あなたの子供になってあげる。だから泣かないで』

少女が女の涙を手で拭おうとした瞬間、辺りは真っ赤な光に包まれた。




「おいおい、女一人にそこまでしなくたって良いじゃねえかよ」

男がもう一人の男に声をかける。

「今朝の炎で生き残るような女だぜ、ましてやここはエンドランドだ。わかるだろう」

「なるほど、魔女だってことかぁ。お前は頭がいいなぁ」

男は薄く笑いながら、焦げた死体を足で小突いている。
もう一人もニヤニヤと下卑た笑いを浮かべていた。

「まあ、これでようやく皆殺しってとこだろうよ。帰って酒でも飲もうやぁ。」


ケラケラと笑う二人を、少女は少し離れたところから眺めていた。
つい先程まで目の前に居た女は、男達の放った炎で真っ黒に焼け焦げてしまった。
近くで同じ炎を受けたはずの少女はなぜか無傷だったのだ。

『ママ』

少女は泣いた。
瓦礫の山の上で、ボロボロと黒い涙を流した。


少女と共に残った白い花だけが、月下の元でキラキラと光っていた。
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